[読了]マーケティング零(ゼロ)

マーケティング零(ゼロ)時々、こういうアカデミック側の本を手に取ると、学びや発見があるから面白い。
今回は特に序盤は序盤が特に面白かった。

序章の部分では、「マーケティング」の話というよりは大石氏の考え方が披露されている部分のような感じですが、学問的な研究と実務関係者の話を沢山聞いてきた大石氏の考え方というべきだと思います。

まず、課題解決に対する立案の部分。
大石氏は次のような図を提示するわけですが、現実を重んじ本質を捉え、そこから帰納法的なアプローチによって要因分析を行います。そしてその本質部分に対しては様々な知識を収集し、そこからソリューションを導き実行し、フィードバックするPDCAのサイクルを回す。

この内容を読んでいたとき、デザイン思考におけるKA法を思い出しました。


以下の図は千葉工業大学情報デザイン演習さんのサイトから拝借させていただきました。


このアプローチは最下部のユーザーの事象が所謂「現実」その現実部分から、ユーザーの行動目標、そして本質的な要求へとmeta化させる。
デザイン思考において、このmetaから課題を導くことで「未知」すなわち未来である「to be」へ向かって思考を進めるわけですが、大石氏の手法も全く同じことで、この現実の事象に対する原因を特定したら、その原因に対するアプローチに外部の知識を利用すると言っているだけなわけです。

ユーザー要求をmeta化し、それを新規のサービスへと展開したり、またはウェブサイトであればUIへ落とし込んだりする事で競合他社とは違うサービスを展開したり、他社の猿真似ではなく画期的なサービスへ導く事を目的としますが、学問側へ知識を求めた場合はどうなるでしょうか。

恐らく学問側の知見は実務とは違うものの、実はその本質だと思っていた内容が人間の何かの心理に紐付いていることが分かったり、単なるmeta的なものではなく、全く違う視点が得られるのかもしれません。どうしてもmeta化させた時の要求は一般的なものになりすぎたりする場合もあると思いますし。

アプローチの違いはあれど、この辺りを考えてみるとかなり面白い!

そして、恐らく多くのマーケッターが考えていると思いますが、アカデミックなマーケティングの概念とここ5年ほど重要視されているDMPとか、その辺との関係性。ここもとても気になります。

1章の部分を読みつつ、STP即ちセグメンテーションとターゲティング、ポジショニングというあたりで捉えてみると、DMPはSTP全体に直接響く施策で、全セグメントを対象としているプラットフォームを想定しているのだろうと思いますが、それは即ち従来のマーケティング概念からすると、コストリーダーシップポジションの企業と真っ向からぶつかる概念として、全ターゲットに対してアプローチする手法といえるのではないかと考えました。

そして昨今のクラウドサービスなどにより「コスト」自体が下がったと言えます。従来のコスト・リーダーシップのポジションではトヨタなど、テレビCMや大量の中吊り広告などお金をかけて全ターゲットに対してアプローチをかけていましたが、インターネットの世界においては、低コストで全ターゲットに対してアプローチが出来るようになったという事でしょうか。
そしてサーバ処理性能によって、セグメント計算もリアルタイムで細かくできるようになると…

そうなった場合、そのDMP自体の差別化は全ターゲットにアプローチする手法の違いであって、その部分については科学や理系的な普遍性・再現性というプログラミングと、相手となる人間という揺らぐ存在とのせめぎ合いと言えるのかもしれません。
全ターゲットへのアプローチがDMPの基礎的データと行動データなどのデータ群を処理し、細かくセグメント化するプログラミング的アプローチによって行われる訳ですが、その人のマイクロモーメントをうまく捉え、どんどんセグメントを変えていける事がもしかすると揺らぐ人間に対するアプローチとしては最適なものになるのかもしれません。

DMPを使って最終的に何を行い、ユーザー価値をどのように生み出すかという考え方によってDMPの中も今後分類出来るようになるのかもしれませんが、現状言われているDMP技術概念は、あくまでB2Bにおける情報の潤滑剤としての基礎技術という程度で、その技術自体はマーケティング手法の1つという立場を脱しておらず、マーケティングの学問としての研究価値はないかもしれません…。

少し考え始めてみるとDMPという技術そのものに対して、ポジショニングがどーとかっていう議論自体、話のレベルが違う気がしてきました(苦笑
ただ、マーケティング手法としてのDMPはここ5年ほどずっと考えられており、それを活用することで細かいセグメントによってユーザーがアクションするであろう確度の高いマーケティングが出来るのではないかと考えられているのも事実です。そうなった場合、それを利用する企業のポジショニングはどのように変化するのでしょうか?

もう一点少し考えてみた内容はPLC(Product Life Cycle)に関してです。ウェブページ1枚を考えた場合、取り扱うコンテンツがニュースや時事的な時間軸が重要なものに関してはコンテンツ自体の消費という意味でPLCと同じようなサイクルをたどることが多いと思われますが、普遍的な情報、恒常的に求められるコンテンツを生み出すというアプローチを取った場合、このPLCという概念から脱し、コンテンツ自体の価値の総和を底上げするのではないかという事です。


時事的なものを取り扱うウェブサイトに関しては常にPLCとの戦いとなり、そうではない価値をユーザーへ提供しているウェブサイトはPLCから脱する。その情報が本当にユーザーから求められているのであれば、情報価値が高く見積もられると。そんな風に感じました。
Knowledgeを提供するサイトはPLC系コンテンツを取り扱い始めた時点で疲弊していくだけなのかもしれません。

そんな風に感じました。

マーケティング零(ゼロ)

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