本書では複素数そのものの振る舞い、複素平面におけるベクトルの振る舞いなども説明されておりますが、この本で新しい概念が提供されるというよりは、現在観察される事象を「複素数」の概念を用いてうまく説明することが出来るというものです。
実数で図ることの出来ない「価値」に対する考え方、関係性に対する考え方、ベクトルの原点としての「私」という考え方、周期性に対する考え方など、確かに「複素数」の概念を一度考えた後に現実を見渡してみると、似たような動きと言っても過言ではないと思われる事象が数々発見出来ます。
私自身、所謂情報の中心であるインターネットの世界で仕事をしている訳ですが、本書を読みながら考えていたのがウェブページの「コンテンツ」に対する考え方です。
何らかのウェブサイトを運営し、それを事業として収益を得ていると、そのページのパフォーマンスの話は避けて通れません。所謂KGIやらKPIなどと言われるようなものですね。
ここではベクトルの原点としての「私」という価値基準に対する考え方を当てはめてみると、ある特定のページを見ている「人」の基準点は皆異なります。その基準点のズレから例えば以下のようにA群の価値基準を持つ人達の集合体とB群の価値基準を持つ人達の集合体が発生してしまうということが容易に有ります。
しかしながら、ある特定の「人」をウェブ運営側が想定しながらコンテンツを構築する、即ちペルソナ的概念を用いてコンテンツ制作を行うのが一般的なため、例えば上の例でいうとA群にむけて作ったページだったりする訳です。
更に「A群である」と予想していた状態でコンテンツを作り始め、そのページでのユーザ行動やゴールの配置などを色々考えて見ると、A群の実際の行動と乖離し始め、最終的にCVRが5%とかそういう低確率になっていきます。
でも実際は見えていなかったB群もコンテンツを見に来ていて、最終的にそのページからのCVRは1%などの数値になる…。
この行動の「ズレ」とは即ち、A群と一括にしてしまった価値基準群の中にもそのベクトル量が違うユーザが沢山混ざっていたりするわけです。またA群と一括にしたものは、本書の点で円を描くのと同様に、何となく基準点を沢山打っていたらその点の関係性からA群という円を観察者が見出したということを意味します。
昨今インターネット事業者が一生懸命IoTなどのセンサー技術やカレンダー、その人の年代、性別、趣味などの情報を通じて捉えようとしているコンテキストというのが「ベクトル量」のことですね。
協調フィルタリングなどは客観的に観察できる行動パターンから似たような行動をしている人は似たようなベクトル量を持っていると仮定した商品などのレコメンド機能と言えます。
行動や数値、検索ワードなどの表に出てきたものから類推するというやり方をインターネットの世界では研究されている訳ですが、IoTやらビッグデータと呼ばれるものの延長として、より人のベクトル量を正しく判定することができるようになっていくのでしょうか…?
佐藤 典司
経済産業調査会
売り上げランキング: 69,812
経済産業調査会
売り上げランキング: 69,812


0 コメント:
コメントを投稿