[読了]インターネットポルノ中毒 やめられない脳と中毒の科学

インターネットが普及し、より若年層がポルノに接する機会は大幅に増加した。本書は「中毒」を科学的に扱ったものでもタイトルの通り「ポルノ」に特化して書かれた本であり、メインはもちろん男性となる。(女性の話も多少ある)

本書は主に掲示板の書き込みを中心としたインターネットポルノ中毒を認識し、接触を絶ち「再起動」プロセスを踏んだ人の書き込みが多く入っている。そのため書かれている内容は生々しく過激に見える部分もあるが、「ポルノ中毒」というものが所謂タバコと同様、コホート的に調べる必要があるだけでなく、実験群と対照群を利用した調査が難しいという性質が大きくあることや、現状調査が行われた論文が多くないという事に起因している。

これはタバコと同様インターネットポルノ中毒も認知され、教育され、改善されるまでには長い年月がかかるという事を示唆している。マウス等を利用した動物実験でもタバコのように曝露させて調べるということも出来ない。脳自体の仕組みという部分とポルノにより同様の状況が作り出される事の2方向で証明していくしかないのだろう。

さてインターネットポルノはFast Porn(高速ポルノ)として以下の性質を備えている。
  • 魅力の誇張
  • コンテンツの無限供給
  • 大量の新規性
  • 過剰消費
より魅惑的に、インターネットにはいくらでもポルノ動画が散乱し、あらゆるフェティシズムに答えるコンテンツを提供し、大量に消費が行われている。中でもポルノ動画の「ドカ食い」をしているようなユーザは沢山のタブで開いたポルノ動画を見ていたり、「寸止め」を利用して一日に何時間もコンテンツを消費している"中毒"者が存在している。

本書によれば「開いている画面の数(種類)」と「興奮の度合い(中毒指標)」には相関あるという。

インターネットポルノに若年のうちに曝露することで2010年以降、性障害を持つ人が急増しており、例えばパートナーに対する愛情や外見、性的好奇心の低下が見られるといいます。

この"中毒"に関して驚くべきことに性的興奮でも中毒性ドラッグでも、脳の活発化する報酬系細胞群の部位は全く同じであり、著者の主張では性的興奮の方がより危険であるといいます。

昨今の脳研究により「中毒」により脳が変化することは知られており、本書でも第2章で脳機能の変化が説明されます。それを簡単に平易な言葉でまとめると
  • 増感 : 快楽の渇望
  • 脱感 : 快楽の鈍化による飢え
  • 意志力の低下
  • 禁断症状
あたりです(本書ではもう少し違う言葉が使われています)。
快楽を覚え、それにより慣れが生じ、より強い刺激を求める。そして禁断症状や目先の欲求に対する重みが増し、長期的な欲望に対する欲求が軽くなる。したがって「ポルノ断ち」するとその逆の現象が観察される。
  • 報酬の先送り能力の向上
  • リスクを取る意欲が高まる
  • 愛他的になる
  • 外交的、良心的になる
  • 自尊心の改善
  • 楽観的になる
  • ユーモアが生まれる
など。
もちろん、これらは最初に述べたとおり実験は非常に難しいため「ポルノ断ち」した人たちの意見の集合体にすぎない。

本書では一部暴論で薬の臨床試験でも出生制御まで出来ないんだから同じだろ?という書き方がされているが、そこには同意できかねるけれども実験が難しいコホート研究においては事例を積み上げる事が重要かなと一般人なりには考えており、実際にそういう事例が多数あるのであれば、一旦は"口伝"や"伝承"じゃないけれども"そういうものだろう"と言うしかないのかもしれない。

インターネットポルノに"良い"も"悪い"もなく、例えば過激なものだから悪いとか自然なものだから良いとかそういう話ではなく、「新規性」を求めFast Pornとして消費することで"中毒"は発生する。
もちろん本書の最初に書かれているとおり、別に特にFast Pornに対して何も感じていないのであれば今まで通りで良いだろう。

ただ何か感じている、もしくは性障害を抱えているなら「ポルノ断ち」を一度試してみる事も良いのではないだろうか。

「中毒」系の本を読んでいると日本は科学を重んじていないのではないか?という気に時々させられるわけですが、射幸心を煽るソーシャルゲームやパチンコなどの娯楽、酒など、少子化を危惧するのであれば抜けやすく、立ち直りやすい社会を作る方向へ向いてほしいと思います。
禁止するのではなく曝露機会を低減する方向へ、例えば一部海外のように公共の場での酒禁止であったり。薬物にはうるさい国でも、それ以外は全然甘いだけでなく教育として教わることが無い。感情的に「だから男は...」という議論は違うというのは「中毒」の本、ポルノであれば本書を読めば分かるし、「それが男のサガ」だという気も毛頭ない。ただ教育もされず気づく機会すら与えられないというのは残念に思う。

タブー視されているからこそ話題に上がることもない深い問題。ちょっと生々しすぎる内容の本だけれども色々と考えさせられる本だ。

一つ個人的な仮説ではあるのだが、薬物でもゲームでも何でも良いが一度脳が変化すると、それ以外の快楽でも同じ回路が利用され中毒化しやすくなるのではないかということだ。例えば薬物中毒に一度なった人はポルノ中毒化もしやすいとかそういう事は脳機能から考えると十分にありえるのではないだろうか。そういう意味では「ハマりやすい」ということを別の目的に利用する事を模索するほうが良い気もする。一度変化した脳が元に戻るということはないのだから。現に本書でもそうだけれども、海外のNoFap系Thread等でも別の楽しみを見つける重要性が書かれていたりする。

ゆっくりと環境に合わせ進化するための脳機能が、集団として一気に技術革新を起こし進化の速さを超えたタイミングからは脳機能、それ自体を解明しつつ罠にハマらない、安易に過剰消費しないなど、自分たちの行動が問われる事となってしまった。法も追いつかず、コホート分析も難しい分野において、現科学の限界を見つつも、因果関係として証明はできなくとも脳走査により結果だけは分かる事もあるし、インターネットには沢山の体験談が散らばっていたりする。そういったものから"因果の証明はされていないけれども、そうらしい"という事象を拾い上げ、自分の習慣を見直すキッカケになれば良いと思う。

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